家や建物を建てる場合は大きく分けて2つの方法があります。
A:設計・施工分離発注方式(建築家+工事会社など)
B:設計・施工一括発注方式(住宅メーカーやゼネコンなど)
海外では、Aのように設計と施工をはっきりと分離することを原則としており
Bのような設計と施工の一括方式はほぼ行われていません。
日本では大工さん(棟梁)だけで建物を建てる伝統・文化がありました。
その名残か、設計よりも施工(工事)を優先する風習は日本独自のもののようです。
果たして、そのような方法で建て主(クライアント)にとって
いい建物(経済的な面も含めて)が建てられるのでしょうか?

ここでは、設計と施工を分離することについて
建築家との家づくりを例に挙げて、メリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット1 建て主の代理人としての設計監理業務
建築家は建て主から直接依頼を受け(契約をし)設計監理業務を行います。
要望を聞き出し、建て主に寄り添いながら建て主向きの設計を進めていきます。
また工事会社に対して、建て主の代理人として工事の進捗状況の確認など(監理業務)を
第三者的な立場で行うため、正しく公正な判断をすることが出来ます。
下記の図でもわかるように、建築家と工事会社は契約関係にありません。
建て主のためにいい建物が出来るように、お互い確認をしあいます。
家づくりでは、建て主・建築家・工事会社の信頼関係が最も大切です。
設計と施工が一括の会社(住宅メーカーや設計施工の工務店など)では
売上げの大きい工事(施工)側の力(意見)がどうしても大きくなり
社内の設計者は建て主向きではなく、社内向きの設計をすることで
建て主の利益ではなく、会社の利益を追求せざるを得ない傾向にあります。
ましてや監理業務は、ほぼ行われていないようです。
仮に行っているとしても、社内間での監理と第三者間での監理では
どちらが厳しく公正な判断を下すことが出来るかは明白です。
この監理業務が結果として、建て主の利益に繋がっているのです。
監理業務についてはこちらをご覧ください。

<設計・施工分離発注方式の場合>
分離

 
 
 

<設計・施工一括発注方式の場合>
一括

 
 


メリット2 適正価格を見極める見積チェック
工事会社の見積書は建て主にはわかりにくい内容が多いため
それを建築家が建て主に代わり詳細に内容を確認します。
工事会社にとっては建築家のチェックは第三者のチェックとなり
工事会社と建築家には癒着がないため、厳しく査定することが出来
適正な価格かどうかを判断できます。
設計と施工が一括の会社(住宅メーカーや設計施工の工務店など)では
そのチェックはほぼ行われず、見積書の内容は不透明なままとなってしまいます。
また、予算にあわない時は、建て主・建築家・工事会社が一体となり見積調整を行っていきます。
根拠不明の減額(値切り)ではなく、内容も根拠も3者が同意の上で進めて行きます。
結果、設計監理料を含めても、設計施工の会社と比較して全体コストが安くなることもよくあります。
信じられないという方も多いと思いますが、コストについてはこちらで詳しく解説しています。

メリット3 オーダーメイドの家づくり
建築家との家づくりは、ゼロから全てを創り上げる完全オーダーメイドです。
そのため世界に一つしかない家が手に入ります。
建て主の要望(コスト)・敷地やその周辺環境・建築家(アイデア)が揃い設計が始まるため
同じものが出来ることがないことは容易に想像がつくと思います。
毎回、それぞれの家に適したボリュームやプラン・構造形式・工法を検討していきます。
柱や壁・屋根などの形を設計するだけではなく、その中で営まれる「暮らし」も設計していくため
建て主の生活スタイルにあった、たった一つの家が出来上がるのです。
住宅メーカーや建売住宅もメディアなどに掲載されている建築事例を参考にしているためか
デザインをしているようにも思えますが、大量生産が求められているが故に
工法や材料も含めて画一的にならざるを得ません。
建築家との家づくりでの成功の鍵はこちらをご覧ください。

デメリット1 時間がかかる
メリット3のように、ゼロから創り上げるため、どうしても時間がかかります。
最低でも、顔合わせから1年間は必要となります。
ただ、建て主は待っているだけではなく、打合せも何度も行いながら一緒に創り上げていくため
意外と忙しいのが現実で、竣工したら「あっという間だった。」という声を頂くほどです。
また「家が出来て嬉しいけど、打合せがなくなって寂しい。」と仰る建て主もいらっしゃるくらいで
建築家との家づくりを愉しんで頂いた証拠だと思います。
画一的な住宅は、顔合わせから半年後には住み始められると聞きますが
自分にあった家に住んだ後の永い年月を考えれば、その数ヶ月の差は無駄ではないはずです。
よく疑問に思われる項目のひとつですが、実際にはデメリットではないと考えています。
それでも、どうしても時間に限りがある方はこちらのQ11をご覧ください。

デメリット2 設計契約時には工事金額が決まらない
建て主が不安に思われる項目のひとつです。
「家は買うものではなく、つくる(建てる)もの(、そして育てるもの)」と言われています。
家電などをただ単に買うのであれば金額が明確なので比較して購入することが当然ですが
家は打合せを重ね創り上げていくものなので、その性質上、
はじめはどのようなものが出来るのかはわからず、当然金額も決まりません。
それでも、要望とコストを踏まえて、過去の経験や経済情勢などを勘案しながら設計を進めていきますが
建て主の要望とコストはあっていない場合がほとんどなので
その場合、どちらが優先かを常に確認しながら進めていきます。
設計が完全に完了する前(基本設計終了後)に、工事会社に概算をとる場合もあります。
設計(実施設計)完了後に見積調整(メリット2参照)を行うことがほとんどで
要望とコストのバランスを考慮し、工事金額を決めていきます。
一見デメリットのように思う方もいますが、ひとつずつ丁寧に計画し
根拠のある適正な価格で創り上げていると考えればいいのではないでしょうか。

デメリット3 断熱や耐震性は大丈夫?
「建築家に設計を頼むと性能が不安。」という声をきくことがありますが、そんなことはありません。
建物の性能を確保することは極々当たり前の話なので、敢えて強調をしていないからかもしれません。
実際は建て主がどの程度の性能を求めているのかを確認しながら進めています。
ただコストとのバランスを考慮して、過剰な場合は忠告することもあります。
「都内で北欧並みの断熱が本当に必要ですか?」など、ご要望を再確認することもあります。
地震国において耐震に関して全く考慮せずに設計するはずもありません。
性能のアピールを重視している住宅メーカーとは家づくりの視点が異なっているのだと思います。
建築家との家づくりでは、性能は確保する前提で「住まいかた」や「生活スタイル」の話を
よくしているので、誤解を招いているのかもしれません。
これも全くデメリットではありません。

ここでは伝えきれないことも多く、更に疑問が増えた方がいるかもしれません。
直接お話させて頂くことが一番だと思います。
下記より、お気軽にお問い合わせください。

※あわせてお読みください!
>>建築家との家づくりは設計監理料(設計料)を払ったとしても全体コスト的には有利だということ
>>建築家との家づくりでは「イメージの共有化」が成功の鍵
>>建築家(設計者)は家や建物の設計だけではなく工事監理を行うということ